「全合成油」という言葉を疑え エンジンオイルはブランドではなく基油で見る

2026年05月16日 21:48
カテゴリ: エンジンオイル

エンジンオイルを選ぶとき、多くの人はブランド名を見る。

有名メーカーだから安心。

全合成油と書いてあるから高性能。

高いオイルだから良い。

安いオイルだから悪い。

私は、この見方をしない。

私がまず見るのは、基油である。

エンジンオイルは、大きく分けると「基油」と「添加剤」でできている。

添加剤はもちろん重要である。

清浄分散剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、消泡剤、防錆剤、粘度指数向上剤。

これらがなければ、現代のエンジンオイルは成立しない。

しかし、オイルの土台は基油である。

どんな基油を使っているのか。

原料は何か。

製造工程は何か。

原油由来の潤滑油留分を精製したものなのか。

水素化処理したものなのか。

高度水素化したものなのか。

PAOなのか。

エステルなのか。

私は、そこを見る。

なぜなら、「全合成油」「化学合成油」という言葉だけでは、中身が分からないからである。

現在の市販エンジンオイルでは、グループ3高度水素化鉱物油を主成分としながら、「全合成油」「化学合成油」と表示されているものが多い。

もちろん、グループ3が悪いという話ではない。

むしろ、グループ3は現代の実用オイルとして非常に優秀である。

街乗り、通勤、買い物、通常の高速道路走行であれば、メーカー指定粘度とAPI規格、ILSAC GF規格を満たし、適切な交換サイクルを守れば、グループ3で十分な場面は多い。

ホームセンターで売っているオイルも、現在ではグループ2の水素化鉱物油や、グループ3の高度水素化鉱物油が使われていることが多い。

だから、安いオイルをすべて否定する必要はない。

問題は、そこではない。

問題は、表示である。

グループ3は、高度水素化鉱物油である。

原油由来の重質留分やワックスを、高度水素化分解・水素化異性化して作る基油である。

昔ながらの鉱物油とは違う。

性能は高い。

しかし、PAOやエステルとは成り立ちが違う。

PAOは、ナフサや天然ガス由来のエチレンからαオレフィンを作り、それをオリゴマー化して作る合成炭化水素である。

エステルは、カルボン酸とアルコールを反応させて作る合成基油である。

つまり、グループ3は改質であり、PAOやエステルは合成である。

この違いは大きい。

私は、ここを曖昧にしたくない。

私の基油分類は、次のとおりである。

グループ1:鉱物油

グループ2:水素化鉱物油

グループ3:高度水素化鉱物油

グループ3+:グループ3を主体に、PAO、エステル、GTL、アルキルナフタレン等で補強したもの

グループ4:PAO、ポリアルファオレフィン

グループ5:エステル、アルキルナフタレン、PAG等の特殊合成基油

この分類で見ると、オイル選びは分かりやすくなる。

グループ3は、実用性能の高い高度水素化鉱物油である。

通常使用では十分な場面が多い。

しかし、本来の化学合成油とは呼ばない。

グループ3+は、グループ3を主体にしながら、PAO、エステル、GTL、アルキルナフタレン等で性能を補強したオイルである。

単なるグループ3より高く評価する。

ただし、主基油がグループ3である限り、PAO主体やエステル主体のオイルとは区別する。

PAO配合とPAO主体は違う。

エステル配合とエステル主体は違う。

ここを見誤ると、オイルの中身を誤解する。

グループ4以上は、PAOやエステルを主体とする本格的な化学合成油である。

PAOは、低温流動性、酸化安定性、熱安定性、蒸発損失の少なさに優れる。

エステルは、金属表面への吸着性、油膜保持性、添加剤溶解性、潤滑性に優れる。

PAOとエステルは補完関係にある。

だから、PAO+エステルという基油設計は理にかなっている。

PAOで安定性を稼ぎ、エステルで潤滑性と極性を補う。

これが、高性能オイルでPAOとエステルが重視される理由である。

ただし、ここでも誤解してはいけない。

PAOだから無条件に最強ではない。

エステルだから無条件に最高でもない。

PAOには弱点がある。

極性が低い。

金属表面への吸着性がエステルより弱い。

添加剤溶解性が弱い場合がある。

シール材への影響を考慮する必要がある。

だから、PAO単体ではなく、エステルやアルキルナフタレン等で補う意味がある。

エステルにも弱点がある。

加水分解、酸価、シール材への影響、コスト、配合設計の難しさがある。

つまり、高性能オイルとは、高価な基油を入れれば終わりではない。

基油と添加剤をどう設計するかで決まる。

それでも、基油の成り立ちは重要である。

グループ3なのか。

グループ3+なのか。

グループ4以上なのか。

この違いを知らずに、ラベルだけで「全合成油だから良い」と判断するのは危険である。

私は、ホームセンターオイルを否定しない。

純正オイルも否定しない。

グループ3も否定しない。

むしろ、普通の使い方ならグループ3で十分な車は多い。

メーカー指定粘度とAPI SP、API SQ、ILSAC GF-6、GF-7等の規格を満たしていれば、通常使用では問題ない場面が多い。

規格は重要である。

API規格やILSAC GF規格は、完成油としての性能規格である。

LSPI対策、タイミングチェーン摩耗対策、酸化安定性、清浄性、省燃費性、排ガス装置保護。

これらを確認する意味がある。

しかし、規格と基油は別物である。

API SPだからPAOではない。

API SQだからエステルではない。

GF-7だからグループ4以上でもない。

グループ3高度水素化鉱物油でも、添加剤設計が優れていれば規格に適合できる。

逆に、PAOやエステルを使っていても、規格を満たしていなければ、指定車両に使うべきではない。

規格は最低条件。

基油は設計思想。

この二つを分けて見る必要がある。

このブログでは、エンジンオイルを感覚や広告文句ではなく、基油、製造工程、規格、粘度、油温、油圧、用途から見ていく。

グループ1は鉱物油。

グループ2は水素化鉱物油。

グループ3は高度水素化鉱物油。

グループ3+は高度水素化鉱物油を主体に高性能基油で補強したもの。

グループ4はPAO。

グループ5はエステル等。

この分類を軸にして、各メーカー、各銘柄を見ていく。

私は、安いオイルを馬鹿にしない。

高いオイルを盲信しない。

有名ブランドを無条件に信用しない。

「全合成油」という言葉だけでは判断しない。

見るべきは、基油の中身である。

そして、表示の誠実さである。

VHVIならVHVIと書けばよい。

グループ3ならグループ3と書けばよい。

PAO配合ならPAO配合と書けばよい。

エステル配合ならエステル配合と書けばよい。

問題は、グループ3を使うことではない。

グループ3をPAOやエステルと同じ顔で売ることである。

私は、そこに違和感を持つ。

このブログの立場は明確である。

グループ3は悪ではない。

ホームセンターオイルも悪ではない。

純正オイルも悪ではない。

悪いのは、中身を曖昧にした表示である。

エンジンオイルはブランドで選ぶものではない。

広告で選ぶものでもない。

基油で見る。

規格で見る。

用途で見る。

油温で見る。

油圧で見る。

交換サイクルで見る。

そして、自分の車に必要な性能を考えて選ぶ。

それが、私のエンジンオイル選びである。

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