オイルメーカー毎の基油表示・添加剤表示に関する誠実度

2026年05月17日 06:27
カテゴリ: エンジンオイル

エンジンオイルを選ぶとき、私は性能だけを見ない。
ブランド名だけでも見ない。
価格だけでも見ない。
「全合成油」「化学合成油」「100% synthetic」という言葉だけでも信用しない。

私が見るのは、基油の中身である。

そして、その中身をメーカーがどこまで誠実に表示しているかである。
エンジンオイルは、基油と添加剤でできている。
基油には、グループ1、グループ2、グループ3、グループ4、グループ5がある。

私の分類では、次のように整理する。
グループ1:鉱物油
グループ2:水素化鉱物油
グループ3:高度水素化鉱物油、VHVI
グループ3+:グループ3を主体に、PAO、エステル、GTL、アルキルナフタレン等で補強したもの
グループ4:PAO、ポリアルファオレフィン
グループ5:エステル、アルキルナフタレン、PAG等の特殊合成基油

問題は、現代の市販オイルでは、グループ3高度水素化鉱物油を主体としながら、「全合成油」「化学合成油」「100% synthetic」と表示されることが多い点である。
もちろん、グループ3が悪いわけではない。
グループ3は現代の実用オイルとして非常に優秀である。
しかし、グループ3はPAOやエステルとは成り立ちが違う。
だからこそ、メーカーが基油をどう表示しているかは重要である。

VHVIならVHVIと書く。
PAOならPAOと書く。
エステルならエステルと書く。
GTLならGTLと書く。
アルキルナフタレンならアルキルナフタレンと書く。
この姿勢があるメーカーは、私は高く評価する。

逆に、「全合成油」「100% synthetic」とだけ書き、基油の中身を曖昧にするメーカーは評価を下げる。
性能の問題ではない。
表示の誠実さの問題である。

私が考える基油表示・添加剤表示の誠実度は、次の基準で見る。

S評価:
基油名を具体的に表示している。
PAO、エステル、VHVI、GTLなどを明記する。
添加剤や設計思想もある程度説明している。
グループ3を使う場合も隠さない。

A評価:
PAO、エステル、独自添加剤、規格、用途をかなり説明している。
ただし、配合比率までは分からない。

B評価:
規格、用途、粘度、スポーツ性能は説明する。
しかし、基油の中身は曖昧。
「100% synthetic」「Full Synthetic」止まり。

C評価:
基油も添加剤もほとんど説明しない。
ブランド名と規格表示が中心。
実用上悪いとは限らないが、基油マニア目線では評価しにくい。

D評価:
グループ3をPAOやエステルのような印象で売る。
基油の中身を曖昧にしたまま、化学合成油感だけを強調する。
表示姿勢として信用しにくい。

AZ

誠実度:S

AZは、基油表示という点ではかなり誠実である。
理由は、VHVI、PAO、エステルを比較的はっきり書くからである。
たとえば、AZは商品ページ上で「VHVI+PAO+エステル」「VHVI+PAO」「PAO+エステル」など、基油構成をかなり直接的に表示している。
これは非常に評価できる。

AZの良いところは、グループ3を隠さないことである。
VHVIならVHVIと書く。
PAOならPAOと書く。
エステルならエステルと書く。
これは、オイルマニアから見ると非常に分かりやすい。

もちろん、配合比率までは分からない。
しかし、少なくとも「何を使っているのか」を見せようとする姿勢がある。
グループ3を使っているなら、それをVHVIとして表示する。
PAO+エステルなら、それも表示する。
この姿勢は誠実である。
AZは安価な印象を持たれがちだが、基油表示の誠実度という点では大手より上に置ける。

BILLION OILS

誠実度:S

BILLION OILSは、基油表示の誠実度が非常に高い。
特にFAシリーズは、PAOとエステルを明確に打ち出している。
86/BRZ、GR86/BRZ向けとして、基油設計の意図も分かりやすい。

これは、かなり強い表示である。
単に「100%化学合成油」と書くだけではない。
PAOとエステルだけを使うと説明している。
さらに、エステルの役割や、添加剤との相性まで触れている。
これは基油マニアから見て非常に評価しやすい。
BILLION OILS FAシリーズは、性能以前に、表示が分かりやすい。
何を使っているか。
なぜ使っているか。
どの車種を想定しているか。
ここが明確である。
だから私は、BILLION OILSを基油表示の誠実度で高く評価する。

A.S.H.

誠実度:S

A.S.H.は、シリーズごとの基油思想が比較的分かりやすい。
FSE、FS、VFS、VSEなどで、エステル、PAO、VHVIの位置付けが分かれる。
基油マニア向けには非常に評価しやすいブランドである。
A.S.H.の良さは、グレードごとの性格が見えやすいことにある。

エステル系なのか。
PAO+エステル系なのか。
VHVI+エステル系なのか。
この分類が比較的しやすい。
もちろん、全配合比率が公開されているわけではない。
しかし、基油思想は見える。
これは重要である。
オイルマニアにとって、基油が見えることは信用につながる。

RED LINE

誠実度:S

RED LINEは、エステル系高性能オイルとして非常に分かりやすい。
基油思想としては、グループ5寄り、エステル重視で評価しやすい。
グループ3を曖昧に全合成油として売るタイプとは違う。

RED LINEは、基油マニアから見ると非常に評価しやすい。
エステル系であることがブランドの中心にある。
PAOやエステルといった本格合成基油を重視するユーザーにとって、何を狙ったオイルなのかが分かりやすい。
価格は高い。
しかし、表示姿勢としては納得できる。
安価な全合成油とは思想が違う。

Royal Purple

誠実度:S〜A

Royal Purpleは、PAOベースと独自添加剤Synerlecを明確に打ち出している点で評価できる。
特に日本公式では、PAOベースの100%化学合成油で、独自添加剤Synerlecが特徴と説明している。
これは、基油と添加剤の両方を見せているという意味で評価が高い。

Royal Purpleの良さは、添加剤名まで前面に出す点である。
基油だけではなく、Synerlecという独自添加剤をブランドの核としている。
これはオイルマニアから見ると面白い。
ただし、添加剤の詳細な化学的中身や配合比率まで分かるわけではない。
そのため、完全な透明性というより、ブランド独自技術を明確に見せるタイプである。
私は高く評価する。

TRUST/GReddy

誠実度:A

TRUST/GReddyは、シリーズによって誠実度が違う。
PLATINUMは一般的なフルシンセティック表示寄りで、基油の中身はやや見えにくい。
しかし、F2は非常に分かりやすい。
F2は、PAOと3種類のエステルを組み合わせたTri-Ester Formulation with PAOを明記している。
これは高評価である。

TRUSTは、一括りに評価してはいけない。
PLATINUMはグループ3〜グループ3+の実用油として見る。
F3はグループ3+のスポーツ油。
F2はPAO+エステル系としてかなり高く評価できる。
特にF2は、基油表示だけでなく、エステルの役割まで説明している。
これは誠実である。
ただし、ブランド全体として見ると、全シリーズで同じレベルの基油表示があるわけではない。
したがって、TRUSTはA評価とする。

MOTUL

誠実度:A

MOTULは、300Vについては非常に分かりやすい。
300VはESTER Core技術を前面に出しており、エステル系レーシングオイルとして評価しやすい。
一方で、8100シリーズ全体は、基油グループの中身が見えにくい製品もある。
そのため、MOTULはシリーズごとに評価する必要がある。

MOTUL 300Vは、表示として非常に評価できる。
エステル技術をブランドの中心に置いている。
これは分かりやすい。
しかし、MOTUL 8100 X-clean系、Eco-clean系、Specific系などは、規格や用途は分かりやすいが、基油の中身は300Vほど明確ではない。
だから、MOTULはブランド全体を一括でS評価にはしない。
300VはS評価。
8100系はB〜A評価。
8100 Power系はA寄り。
MOTUL全体としてはA評価である。

NUTEC

誠実度:A

NUTECは、エステル系・高性能基油系として評価しやすい。
NC系は、基油マニア目線でも比較的分かりやすい。
ただし、全シリーズを同じ評価にはしない。
ZZ系とNC系は分けて見る。

NUTECは、性能面でも基油思想でも評価しやすいブランドである。
ただし、基油構成や添加剤詳細をすべて細かく公開しているわけではない。
そのため、SではなくA評価とする。
NC系は高評価。
ZZ系はグループ3+寄りの実用スポーツ油として見る。

ZERO SPORTS

誠実度:A〜B

ZERO SPORTSは、スバル水平対向向けという用途が非常に明確である。
エステライズでは、ホワイトエステルや有機モリブデンを打ち出している。
この点は評価できる。
ただし、主基油が何なのか、エステル主体なのか、エステル配合なのかは、さらに明確にしてほしい。

ZERO SPORTSは、添加剤・用途表示は比較的分かりやすい。
水平対向エンジン向け。
エステル配合。
有機モリブデン配合。
このあたりは評価できる。
ただし、基油全体の構成として、グループ3主体なのか、PAOを含むのか、エステルがどの程度なのかまでは見えにくい。
したがって、誠実度はA〜Bである。
スバル向け用途表示は優秀。
基油表示はもう一歩である。

SUNOCO

誠実度:A〜B

SUNOCOは、SveltとBRILLで評価が変わる。
Svelt系は、実用グループ3〜グループ3+として見る。
BRILLはエステル配合の高性能系として評価しやすい。
ただし、全シリーズで基油表示が明確というわけではない。

SUNOCOは悪くない。
特にBRILLは高性能側として評価できる。
しかし、基油の具体性という点では、BILLIONやAZほど分かりやすいわけではない。
したがって、SUNOCOはB〜A評価である。

HKS

誠実度:B

HKSは、用途表示は分かりやすい。
API SP対応、LSPI対応、高温域での安定性能、高い油膜保持力、許容温度などを説明している。
これはチューニングメーカーらしく、実用上は分かりやすい。
しかし、基油表示としては「100% SYNTHETIC」止まりで、PAOなのか、エステルなのか、VHVIなのかは明確ではない。

HKSは悪いわけではない。
むしろ、実用スポーツオイルとしては分かりやすい。
0W-20、5W-30、10W-40で許容温度の目安を出している点も評価できる。
しかし、私の評価軸では、基油の中身が見えにくい。
100% SYNTHETICと書いてあっても、それがVHVI主体なのか、PAO配合なのか、エステル配合なのかは分からない。
したがって、HKSは性能説明は良いが、基油表示の誠実度はBである。

WAKO'S

誠実度:B

WAKO'Sは、性能面では信頼されるブランドである。
しかし、基油の中身を細かく見せるタイプではない。
PRO STAGE-S、TRIPLE R、4CRなど、用途やグレード差はある。
しかし、基油マニアが知りたいPAO比率、エステル比率、VHVI主体かどうかは見えにくい。
そのため、基油表示の誠実度としてはB評価である。

WAKO'Sは、現場での信頼感が強い。
ただし、それはブランド・実績・営業力・整備業界での浸透による部分も大きい。
基油表示だけを見ると、AZやBILLIONのような分かりやすさはない。
したがって、私はWAKO'Sを性能面では否定しないが、基油表示の透明性では高評価にしない。

LOVCA

誠実度:B

LOVCAは、価格と性能のバランスが魅力である。
しかし、基油マニア目線では、基油の中身が明確とは言いにくい。
SPORT、RACING、EURO SPORTなどの用途分類は分かる。
ただし、PAO主体なのか、エステル主体なのか、グループ3主体なのかは個別確認が必要である。
そのため、誠実度はB評価である。

RESPO

誠実度:B

RESPOは、粘弾性添加剤やフィーリングで売るブランドである。
添加剤思想は見えやすい。
しかし、基油そのものの中身は見えにくい。
そのため、基油表示の誠実度はB評価とする。

Mobil

誠実度:B〜C

Mobilは難しい。
Mobil 1は高性能オイルとしての歴史がある。
PAO系オイルの代表格だった時代もある。
しかし、現代のMobil 1をすべてPAO主体と見るのは危険である。
基油構成は製品や地域で異なる可能性があり、グループ3、GTL、PAOなどの複合設計と見るべきである。
Mobilはブランド力が非常に強い。
しかし、基油の透明性という点では、PAOやエステルを明確に打ち出すBILLIONやAZほど分かりやすくない。
そのため、私はMobilをB〜C評価とする。

Mobil 1は高性能である。
しかし、Mobil 1だから無条件にPAO主体と考える時代ではない。
基油構成を明確にしない限り、私は過大評価しない。
Mobil Super系はグループ3実用油。
Mobil 1はグループ3+または複合合成基油系。
このくらいで見るのが妥当である。

純正オイル全般

誠実度:C

トヨタ、日産、ホンダ、スバル、マツダ、スズキ、ダイハツ、三菱などの純正オイルは、基本的に基油マニア向けではない。
純正オイルの目的は、基油のロマンを語ることではない。
メーカー指定粘度、燃費、排ガス、耐久性、保証、規格適合を満たすことである。
そのため、基油の中身はあまり前面に出ない。
これは不誠実というより、目的が違う。
純正油は、基油表示の誠実度ではCだが、実用油としては十分合理的である。

純正オイルを馬鹿にする必要はない。
メーカー指定どおり使うなら、純正油は最も安全な選択肢の一つである。
ただし、PAOなのか、エステルなのか、VHVIなのかを知りたいオイルマニアにとっては、情報が足りない。
だから、基油表示の評価は高くしない。

ホームセンターPB・カー用品店PB

誠実度:C

ホームセンターPBやカー用品店PBは、価格と規格適合を重視する実用油である。
DCM、カインズ、コメリ、オートバックスAQ、イエローハットMAGMAXなどは、普通の使い方では問題ないものが多い。
しかし、基油表示としては「全合成油」「合成油」「API SP」「GF-6A」などが中心で、VHVIなのか、PAO配合なのか、エステル配合なのかは分かりにくい。
したがって、基油表示の誠実度はCである。

ただし、C評価だから悪いという意味ではない。
ホームセンターオイルでも、メーカー指定粘度と規格を満たし、適切な交換サイクルを守れば通常使用では問題ない。
問題は、それをPAOやエステル系の本格化学合成油と誤解することである。
実用油としては可。
基油マニア向けの透明性は低い。
これが正しい評価である。

Castrol

誠実度:D

Castrolは、私の評価では最も厳しく見るメーカーである。
理由は、Mobil対CastrolのSynthetic表示紛争の象徴だからである。
グループ3高度水素化鉱物油をsyntheticとして扱う流れを強めた存在として、私はCastrolを信用しにくい。
もちろん、Castrolのオイルがすべて低性能という意味ではない。
Castrol EDGEやMAGNATECが実用上使えないという意味でもない。
問題は性能ではない。
表示の思想である。

Castrolの問題は、グループ3を高性能基油として正面から説明するのではなく、synthetic、full syntheticという言葉でPAOやエステルと同じような印象を与えた歴史にある。
グループ3は悪くない。
VHVIは実用油として優秀である。
しかし、グループ3はPAOではない。
エステルでもない。
原油由来の重質留分やワックスを高度水素化処理した高度水素化鉱物油である。
そこを曖昧にして、全合成油の顔で売る姿勢を私は評価しない。
だから、Castrolの誠実度はDである。

メーカー別誠実度まとめ

S評価:
AZ
BILLION OILS
A.S.H.
RED LINE
Royal Purple

A評価:
TRUST/GReddy、特にF2
MOTUL、特に300V
NUTEC
ZERO SPORTSの一部

B評価:
HKS
WAKO'S
SUNOCO
LOVCA
RESPO
Gulf
LIQUI MOLY
TOTAL/ELF

B〜C評価:
Mobil

C評価:
純正オイル全般
ホームセンターPB
カー用品店PB
モノタロウ系
実用価格帯の全合成油

D評価:
Castrol

総評

オイルメーカーの誠実度は、性能だけでは決まらない。
大切なのは、何を使っているかをどこまで説明しているかである。
VHVIならVHVIと書く。
PAOならPAOと書く。
エステルならエステルと書く。
GTLならGTLと書く。
アルキルナフタレンならアルキルナフタレンと書く。
これが、私にとっての誠実な表示である。
AZは、安価ながらVHVI、PAO、エステルを比較的明確に表示するため高く評価する。
BILLION OILSは、PAOとエステルのみを使うと明記し、添加剤との相性まで説明しているため非常に高く評価する。
A.S.H.やRED LINEも、基油思想が分かりやすい。
Royal Purpleは、PAOベースとSynerlecという独自添加剤を打ち出している点で評価できる。
TRUSTは、F2に関してはPAO+トリエステルを明記しており高評価である。
MOTULは、300VについてはESTER Coreを明確に打ち出しており高評価である。

一方で、HKSやWAKO'Sは、実用スポーツオイルとしては良いが、基油の中身は見えにくい。
純正オイルやホームセンターPBは、実用油としては否定しないが、基油マニア向けの表示ではない。

そして、Castrolについては、私は厳しく見る。

グループ3をsyntheticとして扱う流れの象徴であり、表示思想として信用しにくいからである。
私が嫌うのは、グループ3ではない。
グループ3は悪くない。
ホームセンターオイルも悪くない。
純正オイルも悪くない。

悪いのは、グループ3をPAOやエステルと同じ顔で売る表示である。
エンジンオイルは、ブランド名ではなく中身で見る。
性能だけでなく、表示の誠実さで見る。
それが、私のオイルメーカー評価である。

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